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会員インタビュー INTERVIEW

「出展費用だけを見れば、まだ回収できていません」京都の法衣店が花蓮に通い続ける理由

アパレル

2026.9.13

インタビューに答える久柳 昌子久晃さん

「出展費用だけを見れば、まだ回収できていません」

台湾・花蓮での出展を振り返って、そう語るのは京都の法衣店「久柳」の昌子久晃(しょうじ・ひさてる)さんです。臨済宗の寺院や僧侶を対象に、法衣や袈裟、仏具までをトータルコーディネートする、専門性の高い商いを営んでいます。

それでも「行ってよかったと心から思う」と続けます。出展単体では費用を回収できなかった一方で、現地には大切な人とのつながりが残りました。そこから花蓮県政府とのご縁が生まれ、翌年1月には再訪問。今は現地の寺院との具体的な相談も始まっています。

国内の寺院を取り巻く環境が変化するなか、なぜ海外へ踏み出したのか。うかがいました。

「お坊さんのファッションコーディネーター」

まず、御社の事業内容と主力商品について教えてください。

分かりやすく言うと、お坊さんのファッションコーディネーターです。主に臨済宗のお寺さんや僧侶の方を対象に、お召し物である法衣、これはビジネスマンでいうスーツのようなものですね。それと袈裟、こちらはネクタイのようなものです。そうしたものをトータルコーディネートしています。その他、仏具をはじめ、お寺で使われるさまざまなものを取り扱っています。

宗派によって、扱うものは変わってくるのでしょうか。

変わりますね。よく聞かれる質問なので、最近評判のいい例え話をすると、法衣店という業界はスポーツ用品店のようなものなんです。その中で私どもは、バスケ用品専門店のような立ち位置です。他の宗派はテニス専門店、という感じですね。

専門店同士でも、簡単には代われないということですね。

バスケ専門店がテニスのユニフォームを作っても、「ちょっと形が違う」となりかねません。それくらい宗派ごとに細かな違いや決まりがあります。だからこそ、それぞれの専門分野に特化していて、あらゆる宗派を扱う「総合スポーツ用品店」のような法衣店は、ほとんどないんです。

逆に、宗派を問わないものもあるのでしょうか。

ありますよ。白衣(はくえ)という白い着物は、ビジネスマンでいうYシャツのようなもので、宗派に関係なく形は同じです。スポーツでいうコンプレッションウェアのようなもので、競技を問わず使えるものですね。ただ、法衣や袈裟といった宗派の象徴的な部分になると、形もルールも変わってきます。

製造も自社で手がけられているのですか。

いえ、いわゆるファブレスですね。事業所自体に製造機能はなく、コーディネート役に徹しています。着物でいう呉服店のようなものです。縫製は、それぞれ専門の職人さんにお願いしています。

「同じことを続けるだけでは、未来は広がらない」

業界を取り巻く環境は、どのような状況なのでしょうか。

「お寺の仕事はなくならないから硬いね」と言われることもあるんですが、実際は厳しいですね。お寺そのものが消滅するケースはまだ少ないのですが、よくあるのが住職がいなくなるケースです。後継者がいない。そうすると、近隣の元気なご住職が兼任することになる。そういうお寺がどんどん増えてきています。少子高齢化や檀家離れといった背景もあり、決して先行きを楽観できる環境ではありません。

その中で、新しい方向を探し始めたのですね。

2026年9月で独立して丸5年になります。それ以前は父と一緒に同じ仕事をやっていました。お寺の今後を考えた時に、同じことをずっと続けているだけでは先細りしてしまうという危機感がありました。今ある技術や職人さんとのつながりを活かして、新しい市場へ広げていかないといけない。それが出発点でした。

最初から海外を見据えていたのでしょうか。

いえ、海外はいつか行けたらいいな、くらいの夢物語でした。まずはこの技術を活かして、僧侶向けではないプロダクトを作れないかと探っていったのがスタートです。その過程で、京都信用金庫さんのセミナーや説明会に参加する中で、連結さんの台湾ツアーをご紹介いただいて。「まずはチャレンジしてみよう」というのが一番のきっかけですね。

当時、海外展開への不安はどのようなものでしたか。

やはり「何を作ったらいいのか」ということと、「とりあえず作ったとして、売れるのか」という不安ですね。作ったものがちゃんと評価されるのかどうか。そこに尽きます。

インタビューに答える久柳 昌子久晃さん
「同じことを続けるだけでは、先細りしてしまう」と語る昌子さん

決め手は「聞く相手ができること」

入会の決め手を教えてください。

一つは、将軍府の出展費用が15%安くなることでした。ただ、それ以上に、本当に何も分からない状況だったので、将軍府の前にオンラインで何度も打ち合わせをしていただいたんです。もう分からなさすぎて、スタッフの方をめちゃくちゃ巻き込みました。ああいう相談ができるというのが決め手ですね。

割引よりも、相談できる相手がいることが大きかったと。

そうですね。聞く相手、適切な相手がいない中で、その窓口を作れたというのが一番大きかったです。

出展費以上に価値があった、現地でのご縁

実際に将軍府に出展されて、成果はいかがでしたか。

行ってよかったと心から思っています。出展単体の売上だけを見れば、まだ費用は回収できていません。ただ、それ以上に大きかったのが、台湾・花蓮で今後につながる人とのご縁ができたことです。

その人脈は、どのように広がっていったのでしょうか。

これは狙っていなかったのですが、通訳さんの存在が大きかったんです。私のプロダクトや仕事内容は説明がすごく必要なので、片言の英語では難しいですし、台湾語も中国語もできない。将軍府の会場には専属ではない通訳さんも常駐していたのですが、私はずっとそばについて説明をサポートしてもらえる方がいた方が安心だと思い、連結さんにお願いして専属の通訳さんを手配していただきました。そうしたら、その方が偶然にも花蓮在住の日本人の方だったんです。現地で暮らしている方なので、花蓮での人とのつながりも持っていらっしゃった。それが、その後の思いがけないご縁につながっていきました。

そこから、どこまでつながりましたか。

その方のご友人を紹介いただいて、その方が花蓮県政府の方とつながりがあって。将軍府のイベント終了後に、日本でいう県庁までご挨拶に同行してもらえたんです。そこで、もしかしたら仕事になるかもしれないという話も出てきました。その縁は、その後も続いています。久柳は出展にあたり、売上の10%を寄付すると表明していました。当初はNPO法人を通じた寄付を予定していましたが、花蓮県政府とのご縁ができたことで、2026年1月に花蓮県政府社会処へ直接お届けすることができました。2025年9月に花蓮県馬太鞍渓で発生した堰塞湖決壊災害への義援金です。

1月にも花蓮を再訪問されていますね。

はい。出展をきっかけにできたご縁を今後につなげていきたいと思い、再び花蓮を訪問しました。私はお寺がメインの仕事なので、現地のお寺にも足を運びました。それも通訳の方とのご縁からつながったものです。そうやって少しずつパイプが広がっていきました。

現地のお寺とは、どのような話が進んでいるのでしょうか。

日本との歴史的なつながりが非常に深い寺院で、日本のお守りも扱っておられます。その調達について、私どもで何かお手伝いできないかという具体的な相談が始まっているところです。まだ見積もりを提出する前の段階ですが、こうしたところから少しずつ仕事につなげていければと思っています。

海外展開について語る久柳 昌子久晃さん
花蓮での出展を振り返る。「出展単体の売上以上に、現地でのご縁が大きな成果になりました」

物価は「そんなに変わらない」

実際に海外市場をご覧になって、想像とのギャップはありましたか。

物価がそんなに変わらないな、というのが一つです。日本は物価上昇が出遅れていて、海外はもっとイケイケなのかなと思っていたんですが、花蓮に関してはそこまででもなかった。金銭感覚の目線は、日本とそこまで違わないなというのが感想です。もちろん地域や、特定の層に行けば話は違うのかもしれませんが。

現地での受け入れられ方はいかがでしたか。

とても親日的で、心の距離をすごく近く感じました。滞在中にもう一度訪問を受け入れてくださったりもして。ただ一方で、具体的な商売に落とし込むには、もう一歩ぐっと入り込まないといけないなというのは勉強になりましたね。

海外クラウドファンディングへの挑戦

当機構以外での取り組みもされているとうかがいました。

海外向けのクラウドファンディングに挑戦しました。着物のアップサイクル素材を使った羽織の製品を作るプロジェクトだったのですが、支援は200万円ほど集まりまして、支援者は46人。支援者単価は4万から5万円くらいでした。連結さんとのご縁をつないでくださった京都信用金庫さんから、海外クラウドファンディングに特化したアドバイザリーサービスをご紹介いただき、そこを通じて進めていきました。

支援者はどの地域が多かったのでしょうか。

アジア圏というよりも、アメリカを中心とした欧米の方が多かったです。それですごく勉強になったことも多かったですね。

2〜3年で、売上の1〜2割を海外に

ここまで台湾での取り組みを進める中で、当機構の価値はどこにあると感じられますか。

やはり海外事情に精通しているところじゃないですかね。日本の企業が進出していくにあたって、国別の特徴であるとか、進出にあたっての手続き面であるとか、そういうことに精通している。そこはすごく頼りにさせていただきたいところですし、入会のきっかけにもなると思います。

今後の海外展開の目標を教えてください。

2〜3年以内に、売上の10%から20%くらいを海外にできたらと思っています。安定的に、柱として海外向けの仕事ができるように地盤を作っていきたい。今はまだ将軍府に出展し、1月にも再訪問したという段階で、現地のお寺との相談なども一つずつ進めているところです。まだ本業と並行しながら進めている段階なので、そこを軌道に乗せて、まずは1割くらいを目指していきたいですね。

入会を検討している企業へ

最後に、入会を検討されている企業へメッセージをお願いします。

少しでも海外に興味があるんだったら、入っておかれて損はないですよ。その気持ちを、思い切って一歩前に進めてみてください。

昌子さんご自身も、大きな決断をされてきたのですね。

重要な判断をする時、独立の時もそうでしたが、その前も上場企業のサラリーマンを辞めて家業に戻っています。局面ではやはり、人生は一回きりだから、やらないで後悔するよりは、と考えます。事業をしていると、お金の悩みは尽きません。でも、それだけを理由にやりたいことを諦めるのも違うと思っています。人生は一度きりですし、「一丁やってみるか」という気持ちは、常に判断軸として持っています。

編集後記

「出展単体では、まだ費用を回収できていません」と率直に語ったうえで、それでも行ってよかったと続ける。この順序に、昌子さんの誠実さが表れていました。

印象的だったのは、自社の商材をきちんと伝えるために専属の通訳が必要だと考え、国際ビジネス連結機構に手配を依頼したという判断です。そこで手配された通訳が、偶然にも花蓮在住の日本人でした。その出会いが、現地での人とのつながりを通じて花蓮県政府へ、そして現地寺院との具体的な相談へと広がっていきました。

出展そのものの売上だけではなく、その場で誰と出会い、どこまで深く関係を作れるか。海外イベントの価値の測り方について、示唆に富む事例だと感じます。

出展売上の10%を寄付するという表明を、規模の大小にかかわらず実行したことも、その後の関係につながっているのでしょう。

国際ビジネス連結機構は、海外進出に挑む日本企業が最初の一歩を踏み出す場をつくり、その先を伴走します。海外展開にご関心のある方は、まずはお気軽にご相談ください。

インタビュー対象者

会社名 久柳
お名前 昌子 久晃
コーポレートサイト https://ku-ryu.jp/

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国際ビジネス連結機構には、大手企業から中小メーカーまで150社を超える企業が参加しています。台湾・シンガポール・ベトナム・香港でのライブコマースは累計100回・GMV4億円、マレーシア商談確約ツアーでは参加11社で66件の商談を実施しました。
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