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会員インタビュー INTERVIEW

「安さで戦わない」創業90年の傘メーカーが世界に挑む差別化の作り方

インタビューに答えるスギタ株式会社 杉田佳之さん

「傘は、デフレの象徴のような商品なんです」

そう語るのは、1936年創業の老舗傘メーカー・株式会社スギタの3代目社長、杉田佳之さんです。価格競争が当たり前になった市場で、同社が選んだのは「安さで勝負しない」という道でした。ANA主催のコンテストでの最優秀賞、環境省「Plastic Smart」キャンペーンへの選出、外務省所管・国際交流基金の「現代日本デザイン100選」への選定。日本政府から奨励を受ける傘をつくる、日本で唯一のメーカーとして独自の地位を築いてきました。

そして今、その視線は日本国内から世界へと向いています。国際ビジネス連結機構への入会から約1年。マレーシアでの商談ツアー、台湾でのイベント出展、ライブコマースへの参加を経て、杉田さんが何を感じ、これから何を目指すのか。率直にお話をうかがいました。

デフレに巻き込まれない商品づくりへ

まず、御社の事業内容と主力商品について教えてください。

傘の製造卸と、防災商品の製造卸です。ただ、基本的に傘というのはデフレの象徴みたいな商品で、どんどん安くなってしまっている。それでは僕らも商売にならないので、商品自体にアイデンティティをつけてやっていこうと始めたのが13年ほど前です。

そこから、さまざまな評価につながっていったのですね。

2017年に、ANAさんが開催したアワードで最優秀賞をいただきました。2020年に東京オリンピックがあるということで実施されたもので、僕らは「傘のすべての不便を解決した商品を出せば、傘のリノベーションができるんじゃないか」と考えて出しました。いわば「傘のSDGs」ですね。その後、環境省の「Plastic Smart」キャンペーンに採用されたり、外務省所管の国際交流基金がやっている「現代日本デザイン100選」に選ばれたりもしました。他社とは違う商品をやっていこう、という会社です。

国内ではどのような販路で展開されているのでしょうか。

デフレに巻き込まれない商品をコンセプトにしているので、普通のところで売ると、どうしても値段の競争になってしまう。商品ありきではなく価格ありきで、安くないと売れないと思っているバイヤーさんが多いんです。だから違うところで売ろうということで、テレビ通販が中心になっています。購買層の年齢が高く、お金を持っていて、安いものではなく良いものを求めるニーズをお持ちの方が多い。そこに向けた取り組みをしています。

価格帯の低い市場とは、どのように関わっているのでしょうか。

高い価格帯の商品をやっていると、そこで使っている資材が全部あるんですね。安い価格帯でものづくりをしたいという会社に対しては、その資材をお貸しするという形で関わっています。自社では価格競争に降りていかない一方で、資材という形でなら供給できる。そういう住み分けです。

1936年に創業し、傘一筋で歩んできた同社。90年に及ぶ歴史の中で、この10数年は「安さで戦わない」という明確な転換点となりました。現在は大阪市西区に本社を構え、従業員16名で企画から製造、卸販売までを手がけています。

熱中症対策日傘について語るスギタ株式会社 杉田佳之さん
「傘は、デフレの象徴のような商品なんです」

日本市場の縮小と、海外への視線

海外展開を意識されたきっかけは何だったのでしょうか。

日本のマーケットがどんどん小さくなっていきますし、人口も減っていきます。それに、「お客様は神様です」とか「お値段以上」とか、そういう言葉がもう普通だとみんなが思っている。カスタマー自体がそういう認識だし、そこに寄り添わないと物が売れないと思って商売をしている人たちが多い。やっぱりそうじゃないだろう、という思いがずっとありました。

為替の影響も大きかったのでしょうか。

世界中で値段が下がり続けているのは日本だけですよね。今この円安が、また100円くらいに戻る可能性、つまり日本の国力がそれだけ上がるかというと、想像できない。だったら海外に物を売った方がいい、僕らのアイデンティティを海外で売った方がいいと思い出したのが、数年前からです。ただ、どうやっていいのかがよくわからない状況でした。

「思いに100%共感した」——入会の決め手

入会前に抱えていた海外展開の課題を教えてください。

環境省や外務省、防災のことで内閣府からも応援をいただいていて、政府絡みで海外とのアポイントやアサインは色々といただいていたんです。政府と政府機関との相談の機会とか。ただ、行政がやることって、その時だけなんですよ。通訳をつけて、その時だけやったら終わり。彼らの仕事は場所を作ってエビデンスを残したらそれで終わりで、結果には何もコミットしていない。結局は自分たちで何かしていかなきゃいけない、それをどう使っていくかは考えなきゃいけない、とずっと思っていました。

当機構との出会いはどのような形だったのでしょうか。

最初に繋がったのは上田さんです。入会の決め手は、コストが法外に高いわけではなかったこと。そして、上田さんの思いや話していることですね。もう100%それです。何ができるとかではなく、「あなたたちがやりたいことに、僕は関わりたいと思っているから」と伝えました。

マレーシア商談ツアーで得た、想定外の価値

入会後、どのような取り組みに参加されましたか。

マレーシアと台湾ですね。あとは賀詞交歓会や、麻布で開催されたオフラインの会にも一度うかがいました。

特に印象に残っているプロジェクトはどれでしょうか。

マレーシアですね。あれだけの商談と、向こうで一緒に行った11社の方々ともずっと話ができた。地元の方と話ができて、ある程度有名な企業さんと商談ができる。これを自分たちだけでやろうとすれば、展示会に出展するだけでも100万円近くかかりますし、渡航費もかかる。しかも、そこに対する足跡ができるかどうかもわからない。アポイントが取れるかどうかもわからないし、行ってちゃんと商談してくれるかどうかもわからない。ああいうことをしてもらえるのは、すごいことだよねと話していました。

現地での商談以外に、得られたものはありましたか。

これが良かったんですが、1社に対して現地のお客さんが2人ほど商談についてくださって、最後は5社、6社と順番待ちになるんですよ。その間、バスの中や会社の中で待っている時間に、一緒に行った日本企業同士で話し合えるんですよね。情報交換もできて、すごく仲良くなれる。それがすごく良かった。その後も、連結機構のリソースではなく、それぞれが持っているリソースを使って関わり出しています。

海外に向けた「連結」だけでなく、参加企業同士の「内向きの連結」も生まれている。杉田さんは「僕がやっているこれは自分には使い道がないけれど、御社にとってはすごく良いと思う」——そんな会話が自然に生まれていると語ります。

一方で、自社には合わないと感じた取り組みもありましたか。

台湾のイベントのようなBtoCの場は、正直やりづらいなと思いました。ずっと立って説明をし続けなければいけない。BtoBであれば、1本も売れなくても構わないんです。まだその国での販路がない中で、いきなり売る話をするフェーズではないので。商談ができる、交流ができるということであれば良いのですが、あそこは時間を取られすぎてしまう。

「3センチくらいのヒールは履かせてもらっている」

実際に海外市場をご覧になって、日本製品の評価をどう感じましたか。

まだ手探りですけどね。ただ、日本人であること、日本の製品であることに対するプライオリティは感じました。とはいえ、それは僕らが作ったものではなく、僕らの先輩たち、親父たちの世代が築き上げてきた日本ブランドが「まだ残っている」というくらいなんです。シンガポールで話していると、正直そこまでのプライオリティは感じない。でも、日本製に対しての信頼はまだ若干残っている。中国製や他の海外製とどれだけ違うのかをちゃんと見せていけば、ちょっとだけ、3センチくらいのヒールは履かせてもらっているのかな、とは思っています。

他の海外進出支援と比べて、当機構の特徴はどこにあると感じられますか。

わちゃわちゃしていて楽しいんじゃないですか(笑)。変にコンサルのように「俺はこんなことができます、あんなことをします」と言わずに、「いや、もうめっちゃ頑張るんで、ちょっとよろしくお願いします」と言えてしまうのがすごいと思いますよ。できることとできないことを、ちゃんと人間っぽく言えるというのは、すごいことだと思います。

できることを大きく見せない、ということですね。

期待されるということは、言ったら質問をされるわけで、できなかったら評価がどん底まで下がってしまう。コンサル会社が続かないのはそれなんですよ。期待されているものにコミットして、ちゃんと足跡として残していければいいけれど、なかなかそうはいかない。僕の場合は、結果をコミットしたコンサルでもないし、インセンティブでやっている企業でもない。歩いていくときに「こっちに行った方がいい」「信号を渡った方がいい」と教えてもらえるくらいの感覚でお付き合いしています。それは最初にご説明いただいていたので。

熱中症対策ブランドで、世界へ

スギタの熱中症対策日傘 MEDICA HEAT-SHIELD
熱中症対策ブランドとして立ち上げた「MEDICA HEAT-SHIELD」。2026年4月、シンガポールのアジア太平洋エルダーケア・イノベーションアワード商品部門を受賞した。

今後の海外展開の目標を教えてください。

今年の4月に、シンガポールで開催されたアジア太平洋エルダーケア・イノベーションアワードの商品部門を受賞しました。シンガポールは高齢化がすごく進んでいる国で、その対策に今すごく注力してお金をかけている。先進国と言われるところは全部、少子高齢化なんです。しかも医療技術が発達して、どんどん亡くならなくなっている。

そこに、御社のどんな強みが重なったのでしょうか。

地球温暖化で気温がどんどん上がっている中で、日本には「熱中症」という概念が医療の中にあって、水分補給や塩分補給、それに対応する薬や食べ物、飲み物と、いろんなコンテンツをみんなが頑張ってやっている。でも世界では、まだ「夏が暑くてしんどいから、休んだら治る」くらいの認識なんです。その中で、熱中症対策という提案をするブランド「MEDICA HEAT SHIELD」を立ち上げて提案したところ、受賞につながりました。今はこのブランドの世界展開を考えています。

シンガポールでの受賞は、どのような経緯で実現したのでしょうか。

ジェトロの伴走支援でアテンドしていただいた方がきっかけです。正直なところ、ジェトロがサービスとしてリストアップしてくれた現地企業のリストは、すでに潰れた会社が並んでいたりして、電話してもメールしても何の反応もありませんでした。ただ、アテンドしてくださった有識者の方が、元シンガポールのベスト電気の社長さんだったんです。その方は現地に知り合いがたくさんいて、個人としての繋がりも持っていらっしゃった。そこから紹介された企業さんと話をして、「こういうアワードがある」という情報をいただいて出したんです。

支援制度そのものより、人との出会いが大きかったということですね。

そうですね。その人とのきっかけを作ってくれたのはジェトロなので、意味は若干あると思います。ただ、そこから先をどうするかは自分たちの能動的な動きです。サポーターとして何人か紹介されて、その中から選ぶのも僕の役目でした。向こうも仕事になるので、僕にアピールしてくるわけです。たまたま良い方に当たった、というのはありますね。

2025年の大阪・関西万博でも実績があるとうかがいました。

2025年日本国際博覧会協会さんからご紹介をいただいて、東ゲートの待機列用の傘を全部うちで調達させていただきました。それもあって、万博期間中にドバイやオマーンなど、いろんな国の方がうちの会社に来てくださって。「暑さ対策の日傘って、こんなに涼しくなるのか」というところから始まって、日傘のカルチャーがない国に、今どんどん広がってきているところです。だから、それを広められるような場所を、きっかけづくりとしてお願いしていきたいなと思っています。

MEDICA HEAT-SHIELD の二層構造と遮熱性能
日本医科大学との共同研究による二層構造。頭部表面温度の比較では最大33.5℃の差が出たという(画像はスギタ提供)。

チャンスは、誰にでも同じだけ流れている

同じ方向を向いた企業と関わることの価値を、どう感じていますか。

基本的に、人間の能力なんて大して差がないと思っているんです。やる気と思いだけ。よく言うのは、チャンスはみんなに同じだけ流れているということ。そして人は4種類いる。1種類目はチャンスが見えない人、2種類目は見えるけれど動けない人、3種類目は見えて動けるけれど掴めない人、そして最後が掴める人です。掴むには、日頃から動いていないと、練習していないと動けないし掴めない。それに毎日フォーカスして動いている人たちと一緒にいることは、自分にとってすごくメリットだと思っています。

情報も同じように流れている、と。

チャンスはあるんですよ。ただ、それを見ていないとか、見えるところを見ていない。誰かのためだけに国が用意しているわけでもなく、政府からの情報も、見に行けばある。補助金や助成金だってそうです。誰かに限ったものではなく、ちゃんとそのページに行けば見られる。ただ、そのページにたどり着くようなことをしていないだけなんです。

入会を検討している企業へ

最後に、入会を検討されている企業へメッセージをお願いします。

基本的に、やるのは自分なんですよ。やる気と自分の思いがあれば、それをサポートしてくれる奴らがいるのが連結だと思っています。それから、みんな見たことがないことは知らないじゃないですか。知らないことは知らなくて、知っていることしか知らない。だから、自分の見たことのない景色を見せてくれる人たちがいるというのは、すごいきっかけになると思います。その景色を見せてもらった後に何かをするかどうかは自分の責任ですし、やりたくなった時に手伝ってくれるのも連結だと思う。あとは本人次第ですよね。熱っぽくみんながやっている集まりだと思いますよ。

編集後記

取材を通じて印象に残ったのは、杉田さんが支援に対して過度な期待を置いていないことでした。「歩いていくときに、こっちに行った方がいいと教えてもらえるくらいの感覚」。その距離感を最初に共有できていたからこそ、成果がすぐに数字として表れない段階でも、前向きな関係が続いているのだと感じます。

90年続く老舗でありながら、価格競争から降り、政府に認められる商品を生み出し、今また熱中症対策という新しい切り口で世界に挑もうとしている。「やるのは自分」と言い切る姿勢と、掴めるところまで日々動き続ける実践が、そのまま結果につながっているように見えました。

国際ビジネス連結機構は、海外進出に挑む日本企業が「見たことのない景色」に出会う場をつくり、その先の一歩を伴走します。海外展開にご関心のある方は、まずはお気軽にご相談ください。

インタビュー対象者

会社名 株式会社スギタ
役職 代表取締役社長
お名前 杉田 佳之
コーポレートサイト https://www.sugitakasa.com/view/page/company
サービスサイト https://www.sugitakasa.com/

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国際ビジネス連結機構には、大手企業から中小メーカーまで150社を超える企業が参加しています。台湾・シンガポール・ベトナム・香港でのライブコマースは累計100回・GMV4億円、マレーシア商談確約ツアーでは参加11社で66件の商談を実施しました。
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