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ジョージア進出ガイド|MRSA・国家投資局と欧州・中東の結節点への参入戦略

COLUMN

2026.8.9

ジョージア(Georgia)への進出を検討する際、「どの規制当局に何を申請すればよいのか」「MRSA(医療活動規制国家機関)とはどのような組織なのか」という実務的な疑問が生じます。欧州とアジア・中東を結ぶ位置に立地し、フラットな税制と外資に寛容な法制度を持つジョージアは、2026年現在、日本企業の進出先として注目度が上がっています。

ジョージアの特徴は「EU連合協定(DCFTA)による欧州市場へのアクセス」「法人税・個人所得税のフラット税率」「設立から数日で完了する会社登記」という三点にあります。しかし進出を検討する際、規制当局の全体像や業種別の許認可プロセスが日本語で体系的にまとまった情報は多くありません。本記事では、主要規制当局の役割から、業種別の進出戦略、実務上の注意点までを整理して説明します。

こんな方にオススメ

  • ジョージアへの進出・現地法人設立を検討しているメーカー・中堅企業の海外事業部担当者
  • MRSA(医療・医薬品分野)やNAPR(会社登記)など規制当局の役割を正確に把握したい方
  • 欧州・中東双方へのアクセス拠点として、ジョージアをハブに活用したいと考えている経営者

この記事を読むと…

  • ジョージアの主要規制当局(MRSA・国家投資局・NAPR・Revenue Service)の役割と手続きの流れが分かる
  • 業種別の進出戦略と、欧州・中東の結節点としての地理的優位性を理解できる
  • 進出時に陥りやすいリスクと、実務で注意すべきポイントを事前に把握できる

なぜ今、ジョージアが注目されるのか

なぜ今、ジョージアが注目されるのか なぜ今、ジョ ージア… 地政学的優位 EU連合協定 コスト競争力 規制環境 第三の選択肢 貿易優位

目次

ジョージアへの海外進出が注目を集めている背景には、地政学的な位置づけと制度的な優位性の組み合わせがあります。従来、日本企業が海外進出先として検討するのはASEAN諸国や中国が中心でしたが、競争激化・規制複雑化・コスト上昇といった課題が顕在化するにつれ、「第三の選択肢」として南コーカサス地域、とりわけジョージアへの関心が高まっています。

EU連合協定(DCFTA)がもたらす貿易上の優位性

ジョージアは2014年にEUとの連合協定(Association Agreement)に署名し、その中核をなすDCFTA(Deep and Comprehensive Free Trade Area:包括的自由貿易協定)が発効しています。これにより、ジョージアで製造・加工した製品はEU市場向けに関税優遇を受けられる可能性があり、日本企業にとっては「ジョージアを製造・加工拠点としてEUへ輸出する」というルートが制度的に開かれています。

ただし、DCFTA上の原産地規則を満たす必要があるため、製品の加工度・原材料の調達先に関する要件を事前に確認することが必要です。一般的に、十分な「実質的変更」が加えられた製品がジョージア原産と認定されますが、業種・品目によって基準が異なります。この点は、現地の通関専門家や弁護士との連携が実務上重要です。

また、ジョージアはCIS諸国(独立国家共同体)との経済協力関係も維持しており、西側(EU)と東側(CIS・中東)の双方向へのアクセスを同時に確保できるという地理的・制度的な特徴があります。

フラット税制と外資フレンドリーな制度環境

ジョージアの税制は、法人税率・個人所得税率ともにフラット構造を採用しており、一般的に他の進出候補国と比較して低水準とされています(税率の詳細はGeorgia Revenue Serviceの公式情報をご確認ください)。配当課税については、分配時課税(Estonian model)を採用しており、利益を社内に留保している間は課税が繰り延べられる仕組みとなっています。この仕組みは、再投資・成長資金の確保を重視するスタートアップや中小企業にとって資金繰り面でのメリットがあるとされています。

外資規制については、一般的にほぼすべての業種で外国人100%出資が認められており、持株比率に関する地場資本要件は原則ありません。また、外国人でも現地不動産を取得できる(農地は除外規定あり)ため、製造業が工場用地を確保する際の障壁も低いとされています。こうした制度の透明性と実行のしやすさが、世界銀行のビジネス環境評価(Ease of Doing Business)で高評価を受けてきた背景にあります。

ASEAN進出戦略の限界と「第三の選択肢」としての意義

日本企業のASEAN進出は、製造業を中心に1990年代から2010年代にかけて一定の成熟を見せました。しかし2026年現在、いくつかの課題が顕在化しています。製造コストの上昇(特にベトナム・タイの人件費)、競合他社との差別化困難、現地パートナーとの関係構築コスト、そして規制複雑化が代表例です。

こうした状況の中で、ジョージアは「欧州向け輸出のゲートウェイ」「中東市場(UAE・サウジアラビア等)との地理的近さ」「低コスト・低規制の事業環境」という三つの価値を同時に提供できる拠点として、再評価されています。特に、中東ビジネスを既に展開している、またはこれから展開しようとしている日本企業にとっては、ジョージアをハブとした二拠点運営が検討の対象となります。

ジョージアの主要規制当局マップ

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ジョージアに進出する際に関わる主要な規制当局・政府機関は大きく四つに整理できます。それぞれの役割と所管領域を正確に把握することが、参入の第一歩となります。業種によって対応すべき機関が異なるため、まず全体像を押さえた上で、自社に関係する窓口を特定することが推奨されます。

機関名 英語名称 主な所管領域 対象企業例
MRSA National Agency for Regulation of Medical Activities 医薬品・医療機器・医療施設の許認可・監視 製薬・医療機器メーカー、薬局、病院
国家投資局 Enterprise Georgia / Invest in Georgia 外資誘致・投資促進・補助金・ワンストップ支援 製造業・IT・観光・輸出業全般
NAPR National Agency of Public Registry 会社設立・法人登記・不動産登記・知的財産登録 全業種(法人設立時は必須)
Revenue Service Georgia Revenue Service 税務(法人税・VAT・関税)・通関・輸出入管理 全業種(輸出入・製造・サービス)

MRSA(医療活動規制国家機関)の役割と申請プロセス

MRSAは医薬品・医療機器・医療サービス全般を所管するジョージアの中核的な規制機関であり、日本の製薬・医療機器企業がジョージアで事業を行う際には関与が生じます。医薬品の販売承認(Marketing Authorization)、医療機器の登録、薬局の開設許可、医療施設の認定などがMRSAの主要業務です。

医薬品の登録については、ジョージアが欧州医薬品庁(EMA)のガイドラインを参照した手続きを採用しているため、EUでの承認実績がある製品は手続きが比較的スムーズに進む傾向があるとされています。ただし、現地の登録代理人(Local Representative)の選任が一般的に求められるため、信頼できる現地パートナーの確保が実務上の重要課題となります。また、医療機器については、製品のリスク分類(Class I〜III相当)によって求められる書類の範囲が異なります。

日本の薬事規制(PMDA)と比較すると、申請プロセスの柔軟性・スピードは高い傾向があると報告されていますが、制度は継続的に整備されており、申請時点での最新要件をMRSA公式サイト(mrsa.gov.ge)または現地専門家経由で確認することが重要です。

国家投資局(Invest in Georgia)の活用方法

ジョージアの国家投資局は、外資企業の進出支援を目的とした政府機関であり、投資家向けのワンストップサービスを提供しています。具体的には、設立手続きのガイダンス、適切な行政窓口への橋渡し、投資奨励プログラムへのアクセス支援、ビジネスマッチング(現地パートナー紹介)などが主な機能です。

投資奨励制度として、一般的に「自由産業区(FIZ:Free Industrial Zone)」や「特別貿易会社(VirtualZone)」などの優遇制度が知られています。VirtualZoneはIT・デジタルサービス業向けに設計されており、ジョージア国外の顧客に提供されるサービスには一定の税優遇が適用される可能性があります。ただし、優遇措置の適用条件・範囲は変更される場合があるため、最新の公式情報の確認が不可欠です。

国家投資局へのコンタクトは英語対応が可能であり、初期段階の問い合わせ・情報収集のハードルは比較的低いとされています。進出検討の初期段階で投資局との接触を持つことは、現地の最新規制環境や支援施策を把握する上で有効な手段です。

NAPRによる会社設立・法人登記の流れ

NAPR(国立公的登記機関)はジョージアにおける法人登記の窓口機関であり、会社設立から不動産登記・知的財産登録まで幅広く所管しています。ジョージアの会社設立は、一般的に数営業日以内に完了できるとされており、世界的にも手続きが迅速な国の一つとして知られています。

設立できる法人形態には、LLC(Limited Liability Company:有限責任会社)やJSC(Joint Stock Company:株式会社相当)などがあり、中小企業・スタートアップの場合はLLCが最も一般的に選択されます。設立に必要な書類は定款・設立者の本人確認書類等が基本であり、資本金の最低額規制は一般的に設けられていません。

知的財産の登録(商標・特許等)もNAPRが所管しており、ジョージア市場への参入を計画している企業は、進出前に商標の先行登録を検討することが実務上の観点から重要です。現地でビジネスを展開し始めてから商標紛争が発生するケースは他の新興市場でも見られるため、早期の権利保全が推奨されます。

業種別のジョージア進出戦略

業種別のジョージア進出戦略 1 製造業 2 流通業 3 IT・デジタル 4 サプリメント 5 コスメティクス

ジョージアへの進出において「どの業種がどのような形で参入するか」は、実務上の選択肢を大きく左右します。以下では、製造業・流通業・IT・デジタルサービス・サプリメント・コスメティクスの各領域について、ジョージアの制度環境と組み合わせた進出戦略の方向性を整理します。

製造業・輸出業:FIZと欧州向け輸出拠点としての活用

製造業がジョージアを進出先として選択する主な動機は、EU市場への輸出拠点としての活用です。DCFTA(深化型包括的自由貿易協定)の下、ジョージアで製造した製品をEUに輸出する際の関税優遇を活用するモデルが注目されています。特に、自由産業区(FIZ)内に製造拠点を設けると、輸入原材料の関税免除・法人税優遇などの制度的メリットが得られる可能性があります。

ジョージア国内の人件費は、EU諸国や日本と比較して低水準にあると一般的に言われています(具体的な水準はジョージア統計局の最新データをご参照ください)。また、トビリシ(首都)を中心に工業団地の整備が進んでおり、製造ラインの立ち上げに必要なインフラが徐々に充実してきています。ただし、熟練技術者の確保・サプライチェーンの構築には一定の時間を要するため、段階的な投資計画が現実的です。

中東向けの輸出拠点としても、ジョージアの地理的位置は優位性を持ちます。黒海経由・陸路でのトルコ・中東方面へのアクセスが可能であり、UAEやサウジアラビアへの日本製品の輸出を検討している企業にとっては、中東進出と組み合わせた二拠点戦略が検討の対象となります。

IT・デジタルサービス:VirtualZoneによる税優遇の活用

ジョージアには、IT・デジタルサービス企業向けの特別優遇制度として「VirtualZone」が設けられています。この制度を活用すると、ジョージア国外のクライアントに提供するITサービスに対する法人税が大幅に軽減される可能性があります(詳細な適用条件はRevenue Serviceの公式情報をご確認ください)。

ヨーロッパ全域で優秀なエンジニアを採用しやすい環境を求めるIT企業にとって、トビリシは英語話者の技術人材が比較的集積しつつある都市として知られています。また、ジョージアはIT人材の海外流出問題を抱える一方で、スタートアップ・エコシステムの形成にも力を入れており、現地パートナーや人材確保の選択肢が広がっています。

日本のIT企業がジョージアに法人を設立してEU・中東のクライアントを対象としたサービスを展開するモデルは、税優遇と地理的優位性を組み合わせた事業設計として検討の対象となります。ただし、VirtualZoneの認定要件・運用実態については、現地税務専門家との事前確認が不可欠です。

コスメティクス・サプリメント:中東・CIS市場への輸出ハブとしての戦略

美容・コスメティクス産業やサプリメント・健康食品分野においても、ジョージアは特徴的なポジションを占めています。中東市場(UAE・サウジアラビア・クウェートなど)向けのハラル対応製品や日本品質のスキンケア製品を販売・輸出する拠点として、ジョージアを活用するモデルが考えられます。

ジョージアではコスメティクスの規制がEUのEC Cosmetics Regulation(1223/2009)を参照して整備されているとされており、EU基準での製品開発・安全評価(PIF)を行っていれば、ジョージア市場への参入がスムーズになる可能性があります。サプリメントについてはフードサプリとして食品規制の範疇で管理される場合が多く、医薬品扱いとなる成分を含む製品はMRSAの管轄となります。

中東向け輸出においては、ハラル認証の取得が事実上の必須条件となる市場が多いため、日本からジョージアに輸出する際にハラル対応の有無を確認した上で戦略を立てることが重要です。ジョージアにはイスラム教徒の人口が一定数存在しており(主にアジャリア地方等)、現地でのハラル認証対応の基盤も一部存在しています。

ジョージア進出の手順:設立から事業開始まで

ジョージア進出の手順:設立から事業開始まで 1 事前調査・戦略設計 2 法人設立 3 税務登録・銀行口座 4 業種別許認可 5 事業開始

ジョージアへの進出を実際に進める場合、大きく「法人設立」「税務登録・銀行口座開設」「業種別許認可取得」「事業開始」の四段階に整理できます。各ステップの所要期間・必要書類を事前に把握しておくことで、進出計画を具体化しやすくなります。

  1. 1
    事前調査・戦略設計

    進出目的(製造拠点・輸出ハブ・市場参入)を明確にした上で、適用される規制・優遇制度・税制の全体像を把握します。国家投資局(Invest in Georgia)への初期相談が有効です。現地の法律事務所・会計事務所との契約も初期段階で検討することが推奨されます。

  2. 2
    NAPR(国立公的登記機関)への法人登記申請

    定款・設立者情報等を準備してNAPRに申請します。一般的に数営業日以内に登記が完了するとされており、その後に税務番号(TIN)の取得・Revenue Serviceへの登録を行います。オンライン手続きにも対応しています。

  3. 3
    銀行口座開設・資本金の払込

    現地の商業銀行(TBC Bank、Bank of Georgiaなど大手行が選択肢となる場合が多い)で法人口座を開設します。非居住者・外資法人の口座開設には追加書類・審査期間が発生する場合があります。

  4. 4
    業種別許認可・登録の申請

    医薬品・医療機器はMRSAへの製品登録、食品・コスメ等は食品安全機関(NAFS)や保健省との調整が必要となる場合があります。IT・デジタルサービスでVirtualZoneを活用する場合はRevenue Serviceへの申請が必要です。

  5. 5
    事業開始・継続的なコンプライアンス管理

    事業開始後は、定期的な税務申告・監査対応・各種ライセンスの更新管理が必要となります。制度変更への対応を含め、現地の専門家(弁護士・会計士)との継続的な連携体制を構築することが安定した運営につながります。

法人設立から税務登録までの実務ポイント

NAPRへの法人登記は、一般的には現地代理人または弁護士を通じて行うケースが多いとされています。必要書類の準備・公証・アポスティーユの取得など、日本側での事前作業に一定の時間が必要です。定款はジョージア語での作成が求められる場合があり、翻訳・現地法律確認のコストを見込んでおくことが準備段階では重要です。

税務登録はRevenue Service(税務署相当)で行います。VAT(付加価値税)については、一定の売上規模を超えた段階での登録義務が生じます(具体的な閾値はRevenue Serviceの最新情報をご確認ください)。輸出業においては、ゼロ税率が適用されるVATの還付手続きが重要なキャッシュフロー管理上のポイントになります。

銀行口座開設は、外資法人にとって時間がかかる工程の一つです。マネーロンダリング対策(AML)強化の流れを受け、本人確認・事業実態の証明・株主構成の明示等が求められることが多く、書類不備による遅延を避けるため、事前に当該銀行の要件を確認しておくことが推奨されます。

業種別許認可取得における注意点

業種によって関与する規制機関が異なるため、「どの機関に、どの順序で申請するか」を事前に整理することが、参入を円滑に進めるポイントとなります。特に医薬品・医療機器分野はMRSAの審査プロセスが長期化する可能性があるため、事業開始の想定時期から逆算した準備スケジュールが重要です。

食品・サプリメント・化粧品については、ジョージアのNAFS(National Food Agency)も関係機関として関与します。原材料・製造工程の安全基準適合について、輸入前に必要な手続きを確認しておくことが、税関での不必要な遅延を防ぐことにつながります。

IT・デジタルサービスにおけるVirtualZone認定は、Revenue Serviceへの申請後に審査が行われます。認定を受けるための活動実態(実際にIT活動を行っていることの証明)が求められるため、ペーパーカンパニーとしての設立だけでは認定が認められない可能性があります。

CAUTION

各種許認可・優遇制度の要件はジョージア政府の制度改正により変更される可能性があります。本記事の情報は概要理解を目的としたものです。実際の手続きに際しては、最新の公式情報の確認と現地専門家への相談をお勧めします。

欧州・中東の結節点としての戦略的活用

欧州・中東の結節点としての戦略的活用 欧州市場 結節点ジョージア 中東市場 物流ネットワーク ビジネス展開 UAE・中東連携

ジョージアを単なる一進出先としてではなく、欧州と中東をつなぐ結節点として位置づける視点は、より戦略的な活用につながります。地理的にはトルコ・イランの北側、黒海の東岸に位置するジョージアは、東西両方向への物流・ビジネス展開において独自の優位性を持っています。

中東ビジネスとの連携:UAE・中東市場への橋渡し

中東市場、特にUAE(ドバイ・アブダビ)やサウジアラビアへのアクセスを検討する日本企業にとって、ジョージアは「欧州とのDCFTAを保持しつつ、中東方面への距離的近さも持つ」という二重の利点を提供します。フライト距離では、トビリシからドバイへは直行便で約3〜4時間圏内とされています。

中東ビジネスにおいては、ハラル認証の取得・現地パートナーとの関係構築・文化的配慮が実務の核心となります。ジョージアを中継地として、UAE・サウジへの輸出向けに製品のハラル対応を整備し、ジョージア発の輸出ルートを確立するモデルは、日本から直接アプローチするよりも地理的・コスト的に有利な場合があります。国際ビジネス連結機構では、こうした中東進出を見据えた多拠点展開の事例に関する情報収集・ネットワーク構築の相談にも対応しています。

なお、中東向けのビジネスにおいては、現地の商習慣・宗教的慣行(ラマダン期間中の商談スケジュール等)への理解が商談の成否を左右します。テキストコミュニケーションだけでは伝わりにくいニュアンスも多いため、現地での直接的な関係構築を重視したアプローチが、中長期的な信頼関係に結びつくとされています。

CIS・旧ソ連圏市場へのアクセス拠点としての価値

ジョージアはCIS諸国との経済関係も維持しており、アゼルバイジャン・アルメニアとは国境を接しています。また、カザフスタン・ウズベキスタンなど中央アジア諸国との間にも、歴史的・経済的なつながりが残っています。これらの市場は、人口規模・経済成長の観点から今後の可能性を持つ地域として注目されており、ジョージアをゲートウェイとした中央アジア展開という戦略的選択肢も存在します。

ただし、CIS各国への輸出においては、それぞれの国の規制・関税・現地パートナーとの関係構築が必要であり、ジョージアからの輸出がそのまま自由に行えるわけではありません。市場ごとの制度確認と段階的な参入アプローチが現実的です。

JV(ジョイントベンチャー)構築における現地パートナーの重要性

ジョージアへの進出において、特に製造・販売を伴うビジネスでは現地パートナーとのJV(ジョイントベンチャー)構築が有効な選択肢となる場合があります。外資100%出資が制度上は認められていても、現地の商習慣・行政との関係・流通ネットワークへのアクセスを確保するためには、信頼できる現地パートナーの存在が実務上の強みになります。

JV構築において重要なのは、パートナーの選定基準を明確にしておくことです。財務健全性・過去の取引実績・コンプライアンス体制・意思決定のスピード感などを複数の視点から評価することが推奨されます。また、JV契約書の条項(出資比率・利益配分・解散条件・知的財産の帰属等)については、両国の法制度を理解した弁護士によるレビューが欠かせません。

ジョージア進出のメリットジョージア進出のデメリット・注意点
  • DCFTA(EU連合協定)による関税優遇アクセス
  • フラット税制・外資100%出資可能
  • 会社設立が数営業日以内(一般的な場合)
  • 中東・CIS双方向へのアクセス拠点
  • 医薬品登録がEMAベースで手続きしやすい
  • 市場規模が小さい(国内人口約390万人)
  • 熟練技術者・サプライチェーン整備は発展途上
  • 制度が継続的に変更されるため最新情報確認が必須
  • 日本語でのビジネス情報が少ない
  • 銀行口座開設に時間がかかる場合がある

進出時のリスクと実務上の注意点

ジョージア進出には利点がある一方で、他の新興市場と同様にリスクと注意点も存在します。進出前にこれらを把握しておくことが、ビジネス展開を円滑にする上で重要です。制度面・実務面・地政学面の三つの視点からリスクを整理します。

制度リスク:規制変更への対応と現地専門家の重要性

ジョージアは制度改革を積極的に進めている国であり、これが「ビジネス環境の改善」につながる一方で、「直前の規制変更による想定外のコスト・手続きの発生」というリスクも内包しています。特に、税制優遇措置(VirtualZone・FIZの要件等)や医薬品・食品の登録要件については、定期的に更新・見直しが行われる可能性があります。

このリスクへの対応として有効なのは、信頼できる現地の法律・会計専門家との継続的な関係を維持することです。進出前の調査段階だけでなく、事業開始後も顧問契約を通じて最新情報を把握し、制度変更への対応を迅速に行える体制を整えることが重要です。また、国家投資局や関連省庁の公式発表を定期的にフォローすることも、リスク管理の基本となります。

加えて、ジョージアは二重課税防止条約を複数国と締結していますが、日本とのDTA(二重課税防止条約)の状況については、最新の財務省・外務省情報を確認することが必要です(本記事執筆時点の情報であり、締結状況は変更される場合があります)。

実務リスク:言語・商習慣・人材確保の課題

ジョージアのビジネス言語は主にジョージア語・ロシア語・英語であり、日本語でのビジネス情報や現地パートナーの選択肢は限られています。英語でのコミュニケーションは政府機関・大手企業間では概ね可能ですが、中小企業・流通業者との交渉では現地語(ジョージア語またはロシア語)の対応が必要となる場面があります。

人材確保については、IT分野では一定の人材プールが存在するものの、製造業における熟練技術者・品質管理人材の確保には時間を要する場合があります。また、労務管理においては現地の労働法制への理解が必要であり、解雇規制・社会保険負担等の条件を事前に把握しておくことが安定した雇用関係の維持につながります。

⚠️ ジョージア進出で陥りやすい注意点
  • 制度の良さだけに着目し、現地パートナー選定を軽視する(最重要課題の一つ)
  • VirtualZone・FIZ等の優遇制度を前提に事業計画を組み、認定が得られないケース
  • 銀行口座開設の時間を過小評価し、事業開始が遅延する
  • 日本側での公証・アポスティーю取得の準備に時間がかかることを見落とす
  • 商標登録を後回しにして現地でのブランド保護が後手に回る

地政学リスク:南コーカサス地域の安全保障環境の理解

ジョージアは南コーカサス(カフカス)地域に位置し、ロシア・アゼルバイジャン・アルメニアと隣接しています。2008年のロシアとの軍事紛争(南オセチア紛争)の歴史があり、地政学的リスクをゼロとは言えない環境にあります。2026年現在の状況については、外務省の「海外安全情報」を定期的に確認することが企業リスク管理として求められます。

ただし、トビリシを中心とした主要ビジネスエリアは一般的に安定した環境にあると認識されており、多くの外資系企業が事業を展開しています。リスク管理として、事業継続計画(BCP)の策定・貿易保険の活用・重要情報のバックアップ体制整備などを進出前に検討しておくことが推奨されます。

まとめ:ジョージアを「結節点」として戦略的に活用するために

ジョージアへの進出は、低コスト・低規制・EU市場へのアクセスという三つの特徴を兼ね備えた、日本企業にとって検討価値のある選択肢です。本記事で説明したポイントを整理します。

  • MRSAは医薬品・医療機器の主要規制機関であり、EU基準に準拠したプロセスでの登録申請が基本
  • 国家投資局(Invest in Georgia)はワンストップ窓口として初期相談から支援を受けられる
  • NAPRへの法人登記は一般的に数営業日で完了するが、日本側の事前準備(公証・アポスティーユ)に時間が必要
  • Revenue Serviceでの税務登録・VAT対応・優遇制度(VirtualZone/FIZ)の活用要件を正確に把握する
  • 現地の法律・会計専門家との継続的な関係構築が制度リスクへの対応策
  • 商標等の知的財産は進出前の早期登録が実務上重要
  • 欧州・中東双方向の戦略的拠点としての位置づけを事業計画に組み込む

ジョージア進出の検討は、現地の規制環境・税制・インフラの理解を深めることから始まります。情報が少ない中での意思決定においては、実際の進出事例や現地パートナーとのネットワークにアクセスできる環境を整えることが重要です。国際ビジネス連結機構では、アジア・中東を含む複数の海外市場での事業展開を支援するネットワークを持っており、ジョージアを含む新興市場への進出に関心をお持ちの方の情報収集・連携先の探索において対応が可能です。

ジョージア進出の検討を次のステップに進めたい方へ
  • 海外進出先としてジョージアを検討しているが、情報が少なくて判断できない
  • 欧州・中東の双方向展開を見据えたビジネス拠点の選定を行いたい
  • 医薬品・コスメ・製造業での海外展開を計画しており、規制環境を確認したい
国際ビジネス連結機構について
一般社団法人国際ビジネス連結機構は、日本企業の海外進出・国際ビジネス展開を支援するネットワーク型の社団法人です。会員企業150社超(2025年3月〜)、アジア4カ国でのライブコマース累計GMV4億円超の実績を持ちます。
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よくある質問

ジョージアに会社を設立するのにどのくらいの時間がかかりますか?

NAPRへの法人登記自体は一般的に数営業日以内に完了するとされています。ただし、日本側での事前準備(定款の公証・アポスティーユ取得・翻訳)に2〜4週間程度を要する場合があります。また、銀行口座開設には別途審査期間が必要なため、事業開始までの全体スケジュールには余裕を持った計画が推奨されます。

MRSAへの医薬品登録は日本企業でも直接申請できますか?

一般的にMRSAへの申請には現地の登録代理人(Local Representative)の選任が求められるとされています。日本企業が直接申請するケースはまれであり、現地の規制コンサルタントや法律事務所を通じた申請が実務上の標準的な対応です。EU基準(EMA準拠)のデータ整備が承認手続きを円滑にするとされています。

ジョージアで外国人が100%出資して会社を設立できますか?

一般的な業種においては、外国人・外資法人による100%出資での会社設立が認められています。持株比率に関する地場資本要件は原則ありませんが、一部の規制業種(放送・土地(農地)等)については例外的な制限が存在する場合があります。具体的な業種については、進出前に現地専門家への確認が推奨されます。

ジョージアとEUの間のDCFTAを活用するには何が必要ですか?

DCFTA(深化型包括的自由貿易協定)の関税優遇を受けるには、ジョージア原産地規則を満たす製品であることが条件となります。製品の十分な加工・原材料の調達先・加工工程の証明が求められるため、製品ごとに原産地規則の適用可否を専門家と確認することが重要です。関税優遇の範囲・条件の詳細は、EUとジョージアの税関当局の公式情報をご参照ください。

ジョージアのVirtualZoneとはどのような制度ですか?

VirtualZoneはジョージアのIT・デジタルサービス企業向けの税優遇制度で、ジョージア国外のクライアントに提供するITサービスに対して法人税の大幅な軽減が適用される可能性があります。認定を受けるにはRevenue Serviceへの申請と、実際のIT事業活動の実態が求められます。制度の詳細・最新の適用条件はRevenue Service(revenue.mof.ge)の公式情報をご確認ください。

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上田 直之
理事上田 直之

株式会社アーツ、東証スタンダード上場企業PAとのJV、ベトナム進出支援PAエンタープライズ代表取締役社長、シンガポール現地法人BeautyJapan代表取締役社長を兼務。アジア最大級の美容博覧会の日本事務局を運営。

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