フィリピン進出で最初につまずくのは、許認可そのものではなく自社の事業が外資規制の対象かどうかです。ここが決まらないと、そもそもどの形態で法人を作れるのかが定まらず、その後の申請先も決められません。
フィリピンでは、外資の参入が制限される業種が一覧として公表されており、事業内容によって出資比率の上限が変わります。本記事では、この外資規制の確認から始めて、SEC(証券取引委員会)での法人設立、BOIやPEZAの優遇制度、FDAの製品登録までを、実際に踏む順序で整理します。
こんな方にオススメ
- ●フィリピンでの法人設立を検討しているが、外資規制の調べ方がわからない方
- ●SEC・BOI・FDAがそれぞれ何をする機関なのかを整理したい実務担当者
- ●食品・化粧品・医療機器などの製品をフィリピン市場へ投入したいメーカーの方
この記事を読むと···
- ●外資規制の確認から法人設立、製品登録までの順序がわかる
- ●SEC・DTI・BOI・PEZA・FDAの役割の違いが区別できる
- ●優遇制度を使う場合に、どの段階で申請すべきかがわかる
出発点——外資規制の一覧を確認する
フィリピンでは、外国資本の参入が禁止または制限される業種が法令に基づく一覧として整理・公表されています。この一覧に自社の事業が含まれるかどうかで、取り得る形態が変わります。
| 区分 | 意味 | 実務上の対応 |
|---|---|---|
| 規制対象外 | 外資100%での設立が可能 | 通常の手続きで法人を設立できる |
| 出資比率に上限がある | 一定割合までしか外資が持てない | 現地資本との合弁を組む必要がある |
| 外資の参入が認められない | 外国資本では行えない | 事業内容の見直し、または現地企業との提携で対応する |
CAUTION
事業内容の書き方によって、規制の当たり方が変わることがあります。定款に記載する事業目的を安易に広く書くと、本来不要な制限を受ける場合があります。逆に狭く書きすぎると、後から事業を広げる際に変更手続きが必要になります。設立前に事業計画と照らして設計してください。
また、小売業など一部の業種では、外資が参入する際に払込資本の下限が定められています。規制の一覧は改定されることがあるため、検討時点の最新の内容を確認してください。
法人設立の窓口——SECとDTI
SEC(証券取引委員会)
株式会社や支店など、法人格を持つ事業体の登記を所管します。外国企業がフィリピンに現地法人や支店を設ける場合、窓口はSECになります。名称の予約、定款等の提出、払込資本の証明といった手続きを経て登記されます。
DTI(貿易産業省)
個人事業として屋号を登録する場合の窓口です。法人を設立する場合はSECが窓口になるため、外国企業の進出では通常SECを使います。
設立後に必要になる手続き
SECでの登記が終わっても、それだけでは事業を開始できません。次の手続きが続きます。
- ●事業を行う自治体での事業許可の取得
- ●税務当局への登録と、帳簿・領収書に関する手続き
- ●社会保険関連の各制度への雇用者登録
- ●業種によっては、所管官庁の個別ライセンスの取得
POINT
「法人設立」と「事業開始」は別の到達点です。設立日から営業開始までに自治体・税務・社会保険の手続きが挟まるため、事業計画のスケジュールには両方を分けて入れてください。設立完了をもって稼働できると想定すると、立ち上がりが遅れます。
優遇制度——BOIとPEZA
フィリピンには投資を促すための優遇制度があり、要件を満たせば税制上の恩典を受けられます。代表的な窓口が2つあります。
| BOI(投資委員会) | PEZA(経済区庁) | |
|---|---|---|
| 対象 | 政府が優先分野として定める事業 | 経済特区内に立地する事業 |
| 立地の制約 | 特区外でも対象になり得る | 指定された経済特区内に拠点を置く必要がある |
| 向いている事業 | 国内市場向けを含む優先分野の事業 | 輸出型の製造・サービス |
| 申請の時期 | 事業開始前に登録を行う | 入居前に登録を行う |
どちらも、登録を受けてから事業を始めることが前提です。先に稼働を始めてしまうと、遡って恩典を受けられない場合があります。優遇制度を使う計画であれば、拠点の場所を決める段階で並行して検討してください。
製品を売る場合——FDAの登録
食品、化粧品、医薬品、医療機器などをフィリピン市場で流通させるには、FDA(食品医薬品局)の手続きが必要になります。
2段階の構造
| 段階 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 事業者の登録 | 製造者・輸入者・流通業者としての許可を得る | フィリピン国内に法人または現地の代理人が必要になる |
| 2. 製品の登録 | 個々の製品について通知または登録を行う | 製品カテゴリーによって要求される資料と手続きが異なる |
順序が決まっており、事業者としての登録がないまま製品の手続きを進めることはできません。現地法人の設立が先に来る理由がここにあります。
CAUTION
製品登録の名義を現地の輸入者や代理店に置くと、関係を解消した際に登録を引き継げず、市場投入をやり直すことになります。契約段階で、登録名義の帰属と関係終了時の移管手続きを明文化しておいてください。
進める順序
| 段階 | やること | 窓口 |
|---|---|---|
| 1 | 外資規制の一覧で自社の事業を確認する | 事前調査 |
| 2 | 形態を決める(外資100%/合弁/支店) | 社内判断 |
| 3 | 優遇制度を使うか、拠点をどこに置くかを決める | BOI/PEZA |
| 4 | 法人を登記する | SEC |
| 5 | 自治体・税務・社会保険の手続きを行う | 各当局 |
| 6 | 製品を扱う場合は事業者登録と製品登録を行う | FDA |
この順序を飛ばして現地の代行業者に一括で依頼すると、提示された見積もりが自社に必要な手続きを過不足なく含んでいるかを判断できません。1と2は自社側で固めてから相談に進んでください。
- フィリピンでの法人設立や製品投入を検討しており、外資規制と許認可を整理したい企業
- 展示会・商談ツアーを通じて、現地バイヤー・キーパーソンと直接接点を持ちたいメーカー・ブランド
- 代行や情報提供サービスではなく、自社が判断・行動できる「機会と場」を求めている海外事業担当者
当機構では、会員が台湾向けライブコマース(累計100回・GMV4億円超の実績)・現地商談ツアー・展示会という実際の取引の場に参加することで、現地の税関実務・バイヤー慣行・規制変化といった一次情報に直接触れる機会を用意しています。
当機構が提供するのは「機会」であり「代行」ではありません
よくある質問
外資100%でフィリピンに法人を作れますか。
事業内容によります。外資の参入が制限される業種が一覧として公表されており、該当しなければ100%出資が可能です。業種によっては出資比率の上限や払込資本の下限が定められています。
BOIとPEZAはどちらを選ぶべきですか。
拠点の立地と事業の性格で決まります。経済特区内に入って輸出中心で事業を行うならPEZA、特区外に拠点を置く、または国内市場向けの優先分野に該当するならBOIが検討対象になります。
FDAの登録は法人設立の前にできますか。
できません。事業者としての登録にフィリピン国内の法人または現地の代理人が必要になるため、法人設立または代理人の確保が先に来ます。
法人設立が完了すればすぐ営業できますか。
できません。設立登記の後に、自治体の事業許可、税務当局への登録、社会保険関連の手続きが続きます。営業開始までの期間として別途見込んでおいてください。
現地パートナーとの合弁が必要になるのはどんな場合ですか。
外資の出資比率に上限が定められている業種に該当する場合です。その場合は、出資比率だけでなく、意思決定の方法と関係解消時の条件を契約で明確にしておく必要があります。
